もしかして不登校?【学齢期別の接し方】おすすめ解決への近道〜
本章では、不登校をめぐる「学齢期別の接し方」について、カウンセリングの視点からお話したいと思います。
子どもの不登校が続いている。新学期が始まってから、なかなか学校に行けていない。ゴールデンウィーク明けや長期休みが終わると、こういった不登校に関する悩みの相談件数がいっきに増えます。
学校は、行って当たり前。みんな普通に行っているのになんでうちの子は・・・不登校の子どもを持つ親は、切実な思いがあります。
お悩みケース1
子どもから、「明日、学校ある?(行きたくない)」「お腹が痛いから今日はお休みしようかな」といった言葉に、毎日疲れてしまっています。これって甘えですか?それとも、不登校ですか?
まずは、不登校の定義について整理します。
文部科学省によると、不登校とは「学年中に連続、または断続的に30日以上学校を休んでいる児童や生徒」、「心理的、情緒的、身体的、社会的な理由や背景により学校への通学が困難である児童や生徒」(病気や経済的理由は除く)と定義されています。
一ヶ月を目安に、長期にわたって学校を欠席している場合は、不登校と認識されることが多いと言えます。
カウンセリングを進める上で、不登校傾向という状況を子どもよりも親の方が、深刻な問題だと捉えざるをえないということがあります。
お話を聞いていくと、小学校低学年の子どもを一人お留守番させて、仕事にはいけない。休みをとろうにも、明日は行けるかどうかわからない。「なんで学校に行けないの?」と何回も聞いてしまう。
どうして我が子だけが学校に行けないのだろう。色々な思いがあふれて、子どもに強くあたってしまうことも。とおっしゃっていました。
不登校の子どもはもちろんのこと、親も悩み、苦しんでいるのです。
日本の不登校状態にある児童生徒数は、10年連続で増加しています。令和4年度の調査では過去最多人数が不登校の状態にあると記録されました。
コロナ禍による一斉休校など生活環境の変化で、多くの子どもが心身に不調をきたしたことが大きな要因と言われています。
さらに、子どもが幼児期の頃は、幼稚園や保育園への送迎や公園などで、子どもの悩みを相談する場が多かったように思います。学校へ進むと同時に、そういった機会も少なくなります。
文部科学省の調査によると、令和4年度の国立、公立、私立の小・中学校の不登校児童生徒数が約29万9千人(過去最多)、うち学校内外で相談を受けていない児童生徒数が約11万4千人(過去最多)、うち90日以上欠席している児童生徒数が約5万9千人(過去最多)と高水準で推移しており生徒指導上の喫緊の課題となっています。
更に国立、公立、私立の高等学校においても不登校生徒数が約6万人、うち学校内外で相談を受けていない生徒数が約2万5千人、うち90日以上欠席している児童生徒数が約4千人となっております。
不登校の相談を受けておらず、誰にも頼ることができてない状況が続くと、ますます孤立してしまいます。
本人だけではなく、親も、ひとりで抱え込んでしまうのです。
今回は、学齢期別に、不登校の子どもたちの状況を把握していこうと思います。
小学校低学年
遊びや楽しい活動中心の幼稚園や保育園から、教科学習が始まり規律を重んじる指導のある小学校への移行は、大きな環境変化といえます。この移行におけるつまずきを「小1プロブレム」として大きな問題となっています。
お悩みケース2
発達障害の疑いがある子どもが、授業中に落ち着いて座っていられません。勉強についていけず、登校しぶりがちです。
発達障害のある子の場合、環境の変化に混乱したり、新しい環境にうまく適応できなかったりすることもあります。幼稚園や保育園では、机で学習するという習慣がまだ身についていません。
そのため、新年度の春、1年生の教室は、落ち着かずざわざわ。走り回っている子もいれば、音が気になって、「うるさい」と叫びだす子どももいます。
発達障害のある子どもにとっては、大人しく座っているということがどれだけ難しいか。「それは当然のことで、動いていることが、その子にとって普通だからです。」と返答すると、目を丸くされます。
親にとっては理解できないかもしれませんが、学校生活という場を一生懸命生きているのです。そんな思いを抱えたまま、帰宅します。そして、家に帰ってきたとき、「今日は学校楽しかった?」とよく聞かれます。親を心配させたくないあまり、「うん。」と自動的に答えてしまいます。
「うん。」という言葉の中身を考えてみましょう。親だけが原因で不登校になるということはありません。ただ、その一言を明日から変えるだけで子どもの心を開くきっかけになることは間違いありません。
- 困ったときには、いつでも味方になってくれるという安心感をもたせる
- 集中できる短時間にわけて、やってみようという気持ちを大切にする
小学校高学年
小学校中学年〜高学年にかけて、周囲への関心も強まり、不登校の原因がさらに複雑化していきます。
お悩みケース3
登校できる日があっても、また行けなくなるといった繰り返しです。「どうして学校に行きたくないのか」という理由を聞いても、答えてくれません。
学習面での悩みから不登校につながるケースが増えていきます。学校の勉強が難しくて、授業についていけない。授業で間違えてバカにされた。宿題をやろうと思っていても、できないから、毎日宿題を提出するときに怒られる。
度重なる失敗経験に自信をなくしてしまうことも。クラスによっては、宿題を全員提出できたらごほうびなどがもらえることがあります。
そのときに、「◯◯がいるから達成できない」という周りから不満を言われ、傷ついて帰ってきた。といった話もお聞きしました。学習面と友達関係は別の問題ではなく、つながっていることがわかります。
運動面においても、不器用さが出る子どもや運動が苦手な子どもは、「自分のせいでチームが負けてしまう」といった辛い思いをしています。責任感が強く、真面目な子ほど、ストレスを抱えてしまう傾向にあります。
親にとっては、気にしないでいいのに・・・と思う小さなことでも原因になりえます。とある子は、「いつもと違う場所に、学習セットを置くことになったから」といった理由でした。「そんな理由で学校に行きたくないの?!」と、カウンセリング中に、親が驚くようなことを本人が話すこともあったのです。
よくよく話を聞くと、自分の置いた場所が間違っていることを友達に指摘され、先生にも注意されたそうです。
- 学校に行けない理由を無理に聞き出すのではなく、一つひとつ丁寧に紐解いていく
- 学校生活で困ったり、うまくできなかったりしたときに、「困ったときは、大人が助けてくれる」「大人と一緒にすればうまくできる」という気持ちを子どもが感じられるようにする
- 自分の学習レベルに合った勉強を自分のペースですすめられるよううながす
中学生
小学校でも教科担任制が取り入れられている市町村も増えてきていますが、クラス担任制から教科担任制への変化など、小学校から中学校への移行は、学校生活に大きな違いがあります。
そのことから、「中1ギャップ」と呼ばれてきました。部活動が始まり、選択制の教科もあることから、自分で決めることが要求されていくのです。
お悩みケース4
そろそろ周りも高校受験を意識し出しています。子どもの不登校は解決するのでしょうか。
「再登校が目的なのかどうか」ということを本人としっかりと話し合う必要があります。本人にとってベストな形を目標として共通認識を持つことが高校受験を成功させる近道です。
進路を考える上で、中学生という発達段階では、「自分がどういう人間で、何が得意なのか」ということがはっきりとしなくて当然です。その分、大きな可能性があります。それは、本人の気付きだけではなく、周囲を取り巻く環境によって変わってきます。
自分では気づかないことでも、他者から褒められることによって、ただ好きでやっていることが、人より得意なんだと知った経験はありませんか。中学生が出会う他者は、多いようで限られています。学校の先生や塾の先生、友人、家族、近隣の方々。
限られた中で、自分の自尊感情・存在価値を確立することの難しさがあります。もちろん、親にできることはたくさんあります。
一番近くで見てきた親は、子どもの成長や変化を共に心から喜び合えるからです。そういうアドバイスをすると、「褒めるところがなくて・・・」「勉強も全然だめで、伸び悩んでいます・・・」といった言葉を耳にします。
“筆記用具を出す”=“勉強しようとしている姿勢”なんです。一生懸命やってできなくても、やった事実を目にしたのなら、その姿を「すごいな。」と一言漏らすだけで、自尊感情は高まります。
日頃の行動面であれば、「ありがとう。」「助かったよ。」という一言だけで、存在価値を感じるのです。
- 苦手なことやできないことを問題とする前に、自分の好きなところや良いところ、得意なことに目をやる
- 学習面でも、行動面でも、「できた」「やりきった」という成功体験と達成感を感じられるようにする。
- 不登校の子ども(中学生)の高校進学率は8割ほどあり、選択肢は再登校だけではないことを伝える
高校生
進路やキャリアについても考える時期です。将来を見据え、自分がやりたいことやどうなっていきたいか、ということを真剣に考える時期でもあります。そのためには、まず、今の自分を客観的に見つめ、状況を捉え直しましょう。
とはいっても、自分でも自分のことがわからず、逃げ場のない子どもたちがたくさんいます。子どもも、親も、焦りや将来への不安が出てきたり、今の自分への諦めが生じてきていることがあります。
お悩みケース5
高校卒業後、引きこもりになってしまいそうで、もう高校生になり手遅れなのかと不安に思っています。
不登校の子どもたちの居場所となるフリースクールや放課後デイサービスは、小学生や中学生を対象とすることが多く、高校生の受け入れが少ないことがあります。
実際に、不登校の高校生を受け入れている放課後デイサービスに話を聞くと、高校生の人数が少なく、他の同学年の生徒たちがどういった進路に進んでいるのかといった声を聞く機会がないことを懸念していました。そんな中で、「高校卒業後は、どうしたらいいのか」といったお悩みををもつ保護者の方があとを絶ちません。
孤独感を抱えるよりも、身近なロールモデルを探してみるのはいかがでしょうか。近所のお兄さんやお姉さんの話を聞くことができるのなら、耳を傾けることが一番ですが、なかなか難しいことも多いでしょう。
通信制高校などが集まる説明会に参加することも、視野を広げるきっかけになります。
また、家庭教師のグッドでは歳の近い大学生がたくさん在籍しています。その人たちみんなが、いじめや不登校、学習上の困難がなく、優等生であったわけではありません。進路やキャリアを考えることは、自分の今の状況を変えるチャンスなのです。
- 自分の得意なことはもちろん、自分自身の苦手なことを知るメタ認知の力を高めるように働きかける。
- 今のことだけではなく、将来についての目標と見通しをもたせる。
本章は、学齢期別の接し方についてお話してきました。学齢期別といっても、子どものタイプや不登校背景はさまざまです。その時々の、子どもの状態や様子を観て、現状を把握していかなければ、前へは進めません。
本人の心をひらく瞬間は、対話の中で今の自分をみつめる過程で見られます。悩みを打ち明けることは、勇気がいることですが、いっしょに不登校の子どもへの言葉がけや接し方を考えていきましょう。